いわゆる進学校といわれる高校に通っていた頃。
もう大学受験などは諦めていて、どこか推薦ででも行ける所に行こうと、ケーキ屋さんでアルバイトをしていた。
いわゆる町のケーキ屋さんで、ケーキ職人さんが2人、見習いのような人が2人、
あとは小さく喫茶コーナーがあったのでそこと共通のアルバイトの店員さんという感じだった。
高校では原則アルバイトが禁止だったので初めは中でケーキにセロハンを巻いたり、焼き菓子の包装などをしていた。
そのうち接客も任されるようになり、箱にケーキを詰めたり、ラッピングや誕生日ケーキの注文なども受けるようになった。
すると入口が別になっていて、注文したケーキを食べられるようになっている喫茶コーナーに、
高校で英語を教えている男の先生が来るのが分かるようになった。
毎週だいたい火曜日の夜閉店近くに、エスプレッソコーヒーと必ずチーズケーキを注文して食べられる。
小柄で穏やかなその先生はチーズケーキを食べられる姿がとても自然だったのを覚えている。
何日かして私は思い切って先生にエスプレッソコーヒーとチーズケーキのセットを運んだ。
「お待たせしました」の声に先生は顔を見上げて、最初は驚いたような顔をしたけれど、
その後フッと笑って、何もなかったようにコーヒーを飲み始めた。
私はなんだか先生との秘密が出来たようで嬉しかった。その後も私は卒業するまでケーキ屋さんのアルバイトを続けることができた。
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